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63.スタジオの感想と「強い建築」について(62の記事の続き)

  • hinakokuga
  • 2018年7月2日
  • 読了時間: 5分

以下、前回の記事に引き続き、スタジオの感想です。

まず、自分の案について。

大まかな配置、構成、一階(地下レベル)の作り方は気に入っているのですが、住むには、全体的に暗くて重くて閉塞感があるな、と。笑

窓は一つしかいらないと設計中ズーバーやTAに何度も言われたし、その閉塞感は富士見窓を強調するための敢えてなのですが、実際に建てて住むなら私はもう少し開口部(窓、ドアetc…)を作りたいな、と思ってしまいます。「富士見窓」の強さ、全体の案の重さを維持しつつも、もっと軽やかに住めるような開口部が作れなかったのかな?と。

私のイメージでは、コートヤードから植栽がもっとモリモリはみ出てきて、擁壁も内側はツタがあったりしてグリーンでもう少し明るい印象にする予定だったのですが、ミニマリズムな動画ではそれを表現しきれていないな、と。そもそも素材をどんどん変えていくとまた印象も変わっていくのかな、と思います。また、壁、擁壁の高さももっと変えられたな、と感じています。

↑3階

↑2階

↑1階

次に、ズーバースタジオ総じて感じたことについて、大きく3つ。

まず、前提として、ズーバースタジオでは、常に、彫刻的な「強い建築」を求められることが多かったです。

すべての建築の要素に意味を求め、その要素一つで空間を支配してしまうような、例えば、柱の形一つで空間の印象がガラリと変わる、といったようなことを常に意識していました。

建築が空間すべてを支配して、それを人間が享受する、「建築メイン」と言うのでしょうか。

私は、日本では(というか大学では(?))、隈さんの「負ける建築」ではないけれど、形の強さだけでなくて素材を大切にし、トップダウンというよりボトムアップのような、人間ありきの建築、もっと軽い建築、言わば「弱い建築」を意識してきました。そもそも私が建築に興味を持ったきっかけの実家の建築は、強い建築とは真逆で、生活の受け皿、クオリティの良い生活のサポーターくらいの感覚です。

とにかく、私はもっぱら「弱い建築」への共感を持っていたので、「強い建築」への考え方に順応するのには時間がかかりました。(形の奇抜さ・建築の質などとはまた話は別です。形は奇抜で強くても「弱い建築」、形はシンプルでも「強い建築」はあると感じているし、建築の質はその強さ・弱さとはまた全く違う軸だと感じています。)

しかし、ヨーロッパでは、建築は、構法、環境、長いライフスパンからも分かるように、長い歴史の中で「強い建築」であることが多いのは理解していたし、それを学ぶことは留学の目的の一つでもありました。それなので、ヨーロッパにおいて、その「強い建築」の考え方で1学期間設計できたのは、とても難しかったけれど勉強になりました。

二つめは、日本での「足し算」の建築の難しさを感じました。

伝統的に、ヨーロッパでは、どんどん部屋を追加していくような「足し算」の設計方法である一方、日本では、限られた敷地を割って部屋を作っていく「引き算」の設計方法として、しばしば比較されます。

今回、他のヨーロッパ出身で広い敷地を選んだ友人たちの設計方法を見ていると、積み木のようにどんどん壁や梁や柱を加えながら設計している人が多かったです。しかし私が選んだ日本の敷地では、大きさや制限などから、足し算の設計方法だけで作るのは不可能だと感じました。ズーバースタジオの、建築の一つ一つの要素を強調する方法では、足し算の設計方法の方が向いており、自分の中でうまく折り合いをつけるのは難しかったです。しばしば壁にぶち当たりました。

三つめ、表現においては、素材を全く表現しないビデオ、図面を抽象的なまでにシンプルに表現することは、初めは抵抗がありましたが、講評を通して、確かに一つ一つの造形の意味をじっくり考えられると言う点では有効なのだな、と感じました。

自分の設計のプロセスにおいては、どうしても現実的なことを考えて、問題解決に固執しすぎて受動的な設計になりがちになってしまったな、と感じています。自分の考えと違った時も、今回はこのスタジオをとったんだかからな、と言われたことをすんなり聞きすぎた反省があります。もっと強いDESIREを持って!と言われてしまったこともありました。

今までの考え方とガラッと異なるスタジオを受講したので、いつもの頑固さを抑えて、かなり人の意見も聞いて進めましたが、空間のコンセプトはもっと自分から主張していくべきだったんだろうな、と。

気に入っている部分もあるけれど、あーもっと出来たなーと悔しい部分がたくさんたくさんあります。

兎にも角にも、いつか実際に建てたいと思っている自分の家について、ズーバーに教わりながら、ヨーロッパ的な建築と日本的な建築についてぼんやり意識しつつじっくり空間を考えられたのは、スタートポイントして本当に良かったな、と思います。これを起点に、どんどん設計を変えていこうと思います。

大学2年の後期、建築学科に入って、前川國男邸の模写の後、最初の設計課題は住宅でした。

↑大学2年の時に描いた初めての設計課題の住宅のイラスト。

それから早4年半、最後の設計課題も住宅でした。

どれくらい成長できたのかはハテナ?ですが笑、辛い時はありつつも課題はいつも面白くて、楽しい建築学生ライフを送ってこれたなぁ、と。(まさかあの頃は今スイスにいるだなんて思っていなかったけれど。)

残り半年強の学生生活も、楽しみながら色々学んでいきたいところです。(修論書かなくちゃ。汗)

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